気になった人

昨日、菅俊一さんの個展「正しくは、想像するしかない。」を見に松屋銀座に行った。丁寧に作りこまれたシンプルで美しい作品で、頭がイメージを作るちょうどその瞬間を自覚させてくれた。人間の認知の力を気付かせてくれると不思議と嬉しくなる。鑑賞者の頭の中まで設計された格好いい展示だった。

そのまま銀座や有楽町あたりをふらふら歩いていたら、通りすがったギャラリーに見覚えのある絵のポスターが貼られてた。よく見たら、伊藤潤二さんの個展で、偶然に出会えたからかなりうれしかった。たくさんの名シーンの原画を実際に見れた。線の数と密度にはほんとうに圧倒された。小さな原稿に正確に、大量に線を敷き詰め、かつ、絵として調和を保つ技術の高さ。もう最高。

ギャラリーの中に一人の女の人がいて、一枚一枚じっくりと原画を見つめていた。一枚につき2~3分は見ていたかな。顔はマスクもしてたしよく見えなかったけど、たぶん20代。髪はまっすぐで長くて、黒い革ジャンを着てた。自分も絵を近くで見たかったから、その女の人が見ている絵をなかなか見れなくてちょっと邪魔だと思った。一方で、この人はどんな人なんだろうと声をかけたくなった。実際には声をかけるわけないんだけど。Twitterで、化粧をして伊藤さんの漫画に出てくる女の人に扮する人を見たことがあるから、その人かもしれないと思った。一枚の絵を見るのに自分の何倍も時間をかけているその女の人にはいったいどんな風に伊藤さんの絵が見えているんだろう。

自分が見えない世界を見ている人は魅力的だし、そういう人の話を聞くのって楽しいよね。